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第66回 その巨大企業
 

 

●外部の対応

  その巨大企業では、新しい案件がなかなか通らない。一時いい加減な発注などがニュース等で問題になり、それ以来、見積書1つを出すにも、最短で一週間以上かかる。だから、営業成績があがらない。同業者に先を越されてしまうから。

  その会社の投資案件も、どれも成功したためしがない、と言われている。

  他から入ってくる情報はタダだと思っているから、情報をその会社に対して出すときも、その会社に無礼なんてのは、日常茶飯事。結果として、誰も新しい情報をその会社に出さなくなる
  その会社の幹部が米国に視察旅行に行く、ということがあり、米国の主要な会社に手配をしても、みんな拒否される。仕方なく、その会社と取り引き関係のある商社にお願いして、やっとアポが取れた、ということもあったという。

  部長、課長、と名刺に役職名をつけていても、その役職名通りの仕事をその人がしているとは限らない。権限がないのに、役職名がついていたりする。はなはだしいのは、その会社の外部から来る嘱託社員に役職名がついた名刺を持たせて営業させている。見る人が見れば、これを「詐欺」ということだってあるはずだ。

  ある難しい案件を受注する。これは難しいから、発注側の技術者と受注側の技術者の緊密な連携が必要なのに、間に入った「プロジェクトマネージャ」なる、営業ともなんともつかない人間が、この間を断ち切って仕事にならなくしてしまう。それが「管理」であり「自分の仕事」だと思っているのだから、始末が悪い。非効率な仕事の典型だと思うのだが。

  どことは言わないが、「あ、おれの会社だ」と、心当たりがある人は、きっと多いことだろう。

●宙吊り状態

  いま、日本の大企業、とりわけ巨大なIT企業というのは、どこもこういった及び腰の仕事しかできないし、一番元気でいなければならないはずの30代、40代の現役の社員に手かせ足かせをはめて、まったく動けない状態にしている、というのが、私の見た、現在のこの日本の状況だ。

  さらにひどいことに、新しい案件が舞い込んでも、この体制ではなかなか稔ることがない。稔らないだけならともかく、「できない」とは言わないから、その会社に見切りをつけて、他の会社にお願いする、ということもできない、宙吊りの状態に客を置いてしまう。そして平然としている。

  この国のIT企業の衰退は、前にもこのコラムで書いた通りだが、バブル崩壊からのこの15年、日本の企業人は堕落し、新しいものをつくり、新しい事業のリスクを負うことが、できなくなってしまった。それは余裕がない、ということではなく、あたかも「会社というのはなにもしないことがいいのだ」と決め込んでしまったかのように、私には見える。

●保身という病理

  新しい世代の「芽」を潰しておきながら、片方では「新事業」というコトバを乱発する。実際には新事業はさまざまな事由をくっつけて、行わせないようにしている。大企業にいる自分の「保身」のほうが、会社や日本の行く末よりも大切だから、こういうことになってしまう。

  いま、日本の大企業、特にIT企業のほとんどが、こういった「病理」の中にいる、と私には見える。
今の日本ほど、企業組織にいて息苦しい時代はないんじゃないだろうか?本当の意味で教養も常識もない幹部が、日々の仕事に追われて、組織を維持する一人一人の苦労を省みることもなく、ただ毎日を過ごしている。

  現場を見るとわかる。日本はここから崩壊するのではないだろうか?

 

 
     
   
  ※ここでは、このコラムの著者三田典玄氏が撮影された写真の中から、著者選りすぐりの作品を毎回数点ずつ掲載しています。  
 

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