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第63回 統廃合の季節と管理職
 

 

●最近の事件

  カメラメーカーの老舗、ニコンがいよいよデジタルではないカメラ事業から撤退する、というニュースを聞いたのは、昨年末のことでした。そして、いままた、2006年の1月の下旬に、同じく写真事業の老舗、コニカミノルタが、一般消費者向けのカメラ、デジタルカメラ等を含めた写真部門をすべて終了し、デジタルカメラについてはソーニーに事業譲渡する、という発表がありました。

  さらに、1月16日には、日本のITベンチャーの雄の1つと見られていたライブドアに東京地検の抜き打ち捜査が入りました。たとえ捜査がここで終わって、犯罪の立件ができなくとも、日本の株式市場を道連れにしかねないこの事件によって、同社のダメージは非常に大きなものといわざるを得ないでしょう。このことが引き金となって、ライブドアの株の大量の売りが市場に混乱を引き起こし、日本の株式市場では大幅な下落と、東証の10年前の古いシステムの欠陥が暴露されました。

  また、昨年から続いている建築設計の耐震強度偽装疑惑は、いよいよ大きな見せ場となりました。

●「Cマガジン」休刊

  これらの報道の影で、IT業界では、20年以上続いた、ソフトバンク社の「Cマガジン」が休刊する、というニュースが流れました。まだ正式な発表にはなっていないようですが、これもまた、日本のIT業界では大きなニュースだと私は思っています。

  Cマガジンは、日本のプログラマのほとんどが読んでいたソフトウエアエンジニア向けの専門誌でした。私も、初代の菊池編集長に呼ばれ、創刊号から60号を越えるくらいまで、エッセイを連載をさせていただいていました。連載の途中で菊池編集長が若くして亡くなられ、星野編集長に変わってからもしばらくは連載をしていましたが、ネットバブルの頃に、連載をやめました。

●日本産業の現在

  自分としてはいろいろな思い出がある雑誌ではあるのですが、なによりも、当時、ソフトバンクで出している雑誌で唯一黒字の雑誌だった、という事実が示すのは、やはり当時は製造業、そしてそれに連なるIT産業が非常に盛んだった、ということだと思います。しかし、いま、日本では製造業といえば中国需要向けの産業が非常に良い以外は、世界的に売れるものをつくることがなくなりました。日本では人件費が高く、消費者向けの商品では、なかなか安くて良いものができないのです。

  自然とエンジニアの働く場所が日本ではとても少なくなってきて、また、あったとしても、労働の条件がなかなかあわないことが多くなってきました。さらに、日本の産業の根幹を作っていた製造業がそれなので、その周辺にあるマスコミ産業なども含め、全く元気がありません。Cマガジンの休刊というのは、そういう事実を象徴している出来事の1つだと、私は思います。

●三十代に元気がない!

  特に日本の三十代の働き盛りの人たちにあまり元気がない、というのはよく言われることです。当たり前のことですが、社用で使うタクシー代からなにからを削られ、給与も十分にもらえず、物価も税金も高く、貯金もできない。こういう状態では、自分の仕事に誇りと自信など、持ちえることはないでしょう。「仕事をしている」のではなく「仕事にしがみついている」という、ネガティブなイメージがあまりに、今の仕事には多すぎます。

  また、日本の各省庁も大幅に予算が削られ、役人も上から下まで元気がありません。そして、お金が無い、ということよりも、その「やる気の無さ」が、日本をさらに悪くしているように感じます。

●マイナス成長時代の管理職

  低成長どころか、マイナス成長のこの世の中にあって、若い人間もその現状を知らないわけがありません。ですから、お金をどんどん使えるから、いい、ということではなくて、手ごたえのある仕事、手ごたえのある上司の指示や評価、というものが、今こそ、本当に大切なのです。しかし、多くの管理職は、お金がなくなると、自信を失い、方向性を失い、狼狽します。若い人間がそんな上司を望ましいと思うでしょうか?

  ネットバブルの華やかな2000年の前半に、米国の辛口で知られるコラムニストは「風が強ければブタだって空を飛ぶ」と言いました。その頃、シリコンバレーでは毎日17人の億万長者が生まれていた、と言います。お金があれば、誰だってなんでもできるでしょう。景気のいいときは、どんなヘボな経営者でも経営はできるのです。

●経営者の本当の実力

  しかし、本当の意味での管理職や経営者の実力というのは、お金の面でももちろん発揮されなければなりませんが、人の作るこの社会をいかに活性化していくか、ということも、非常に大きな役目なのです。
  少ないお金でも、いかに幸せを求めていくか、ということが大切なのです。なんとかみんなで肩を寄せあって生きていくしかない、というとき、経営者の本当の実力が問われます。

  この現状の中で、方向を示し、それに向かって着実に仕事の指示を与える上司(経営者)こそが、この時代に生き残る上司(経営者)でしょう。お金の多寡はあまり問題ではないのです。特に歴史の浅いIT産業では、なかなかこういう思考になりにくいかと思います。そういう意味で、日本のIT産業の管理職もまた、淘汰の時代になった、と言えるのです。

 

 
     
   
  ※ここでは、このコラムの著者三田典玄氏が撮影された写真の中から、著者選りすぐりの作品を毎回数点ずつ掲載しています。  
 

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