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第59回 年の瀬の事件から
 

 

●事件とソフトウエア

  建築の耐震強度設計偽装の疑惑は思いのほか大きな波紋を投げかけています。この偽装の際、使われたのは建築物の強度から、逆に建築物の素材をどのようなものにしたらよいか、ということを「逆算」できるソフトウエアの存在でした。

  また、みずほが株の売り注文を間違えて大量に安い株を売った、という「誤発注」の事故で、株価が大きな影響を受けました。これも、コンピュータシステムの操作を間違えたり、間違えた操作を取り消すことができない仕組みがあったり、という、ソフトウエアのミスに起因するもの、と言う報道がされました。

  すでにインターネットをはじめとした、コンピュータネットワークを基にした社会システムが社会のほとんどの部分に使われています。そして、これらの仕組みを使わないと、にっちもさっちもいかない、という現実があります。

●2007年問題

  ところで、ちまたでは「2007年問題」が取りざたされています。2007年には戦後の「産めよ増やせよ」の運動で生まれた「団塊の世代」が退職する時期で、その年度の退職者がおおよそ一千万人います。もちろん、その一千万人に払われる退職金が非常に多い、というばかりではなく、そのうちの約4割が「デジタルデバイド」の下層に位置する人たち、と言われています。つまり、パソコンもインターネットも触りたくない、という人たちなのです。

  この人たちは、老後をどのように暮らすにせよ、これからの社会では、ITやインターネットの利用をしなければ、社会的に大変に不利益な位置で暮らすことをどこかで余儀なくされるはずです。特に、老後の資金の運用を自分でしようと思えば、これらの「IT」の利用は必須になります。

●これからのIT活用

  今までは「人をリードするために」ITが必要な世の中でした。それはビジネスの勝利への道を歩むのに必要な道具としてITが使われる世の中でした。しかし、ここしばらくの社会情勢は「ITで合理化=コストダウンができる」ことが広く世の中に知れ渡ったため、社会のどこでも「IT」が当たり前に使われるようになりました。そうしなければ社会システムがやっていけない、という「不況」がそこにあったからです。

  たとえば、2006年4月から介護保険やその周りの法律が大きく変わります。健康保険の支払いを極力少なくしていかないと、長期の保険システムの運用が不可能であるために、入院患者数を数年のうちに半分にする、ということが、厚生労働省の目指す目標となっています。つまり、かなりの病人でも在宅で診なければならない、ということになります。そして、できれば病院に行かないで一生を終える、ということが今以上に望ましい、とされることになります。

  そうなると、様々な健康関連の情報、特に食とか運動の情報を自宅にいながら取る必要があるばかりでなく、個別の健康維持のサービスなどを、インタラクティブなネットワークシステムで受けることも必要になるでしょう。在宅のこれらの需要は、今までは人手に頼っていたのですが、なによりもコストの面から、それができなくなってきたため、介護保険法などが大幅に手直しされることになったのです。

  つまり、健康維持、介護などのサービスも、IT化されていくことになります。それはかつてのITのように「ものめずらしいから」「儲かるから」ではなく、「そうしなければやっていけないから」に、理由が大きく変わったのです。

  ですから、私がITの仕事を始めた20年以上前は、「必須」ではなかったことが、いまや「必須」の世の中になっています。いま、始まっていることこそ、本来の意味での「IT革命」なのかも知れません。

●ITの役割の変化

  だからこそ、最初にお話したような「IT技術の悪用」「IT技術の間違い」が社会的に大きな意味を持つものとなり、セキュリティがうるさく言われるようになったのだと思います。

  これからITを使うにしろ、それを仕事にするにしろ、本当に大切なことは、ITそのものが社会から大きく、かつ非常に重い役割を持つようになった、という認識です。そのために、最初に掲げた事件などに限らず、「悪用」は厳重に取り締まることや、それが法の不備によってできない場合は法の整備をしっかり行うことなどが、大変に重要なことになります。

  ソフトウエアを作る側で長く仕事をしてきた私ですが、最近はこの変化を体で感じます。いま、ITの役割の重さが、さらに増す時代に入ったのです。

 

 
     
   
  ※ここでは、このコラムの著者三田典玄氏が撮影された写真の中から、著者選りすぐりの作品を毎回数点ずつ掲載しています。  
 

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