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第58回 ベンチャーへの就職
 

 

●就職活動をする

  これから就職をしよう、という学生にとっては「どこの会社に就職するのか?」ということや「どんな仕事をするのか?」ということ、そしてなによりも「自分の将来をどうしたいのか?」と考えることは、他の何を考えるよりも、やはり気にかかることは言うまでもありません。

  いま、日本は不況と言われていますが、東京の街に自動車は途絶えたことがありません。しかし、たとえば韓国などですと、不況になると、はっきりと自動車の数が減り、それが見ていてよくわかるほどになります。

ということは、日本の不況はこの先、まだまだもっとひどくなる可能性がある、ということです。

●起業

  この状況の中、「起業」がもてはやされています。大企業に就職したところで、すでに終身雇用は崩れており、リストラの波に洗われない保証はない、という現状であれば、そういう選択肢は当然考えておくべきでしょう。そして、それは事実です。

  最近は政府あげての「産学官連携(いわゆるTLO:Technology Licensing Organization 技術移転機関)」がもてはやされていて、2004年の末には、大学発ベンチャーの数はおおよそ1000社、と言われるようになりました。しかし、2005年も押し詰まった現在、これらの会社のどこも黒字に転換したところはない、と言う事実があります。

●TLOの実状

  一方、鳴り物入りで作られた「産学官連携企業」への疑問が渦巻き始めたこの折、「日経ビジネス」誌の11月14日号では、なんとその産学官連携の象徴的ベンチャーといわれていた大阪のサインポスト社の黒川社長について「利益もあがっていない会社で、借りたカネで贅沢三昧」みたいな記事が載っていました。その記事には、写真つきで、彼が買うであろう高級住宅のある住宅街の真ん中で、高級外車の前でふんぞり返る彼の写真まで載っていました。さすがに、悪意を感じるほどの「記事」ではありましたが、内容は正しい数字に立脚したものでした。

  実際、これらのベンチャー企業はこの会社に限らず、すべて現状は「借金」で大きくなっています。つまり、なんらかの実業で儲けを出せる体制にはなっていません。これからそれをするのだから、現在はなっていないのは当たり前、ということになります。しかし、じゃあ、いつまで赤字を出し、借金を続けて行けるのか?ということ、言い換えれば、いつ黒字転換するのか?という事業計画に、たいした見通しもない、というところが非常に多いのです。

●ベンチャー企業

  就職をする側から見ると、これらの企業はかっこよく見えます。社長も社員も若く、使える金がたくさんあり、若くても役員になり高給が取れる。ついつい、そう思ってしまい勝ちです。 「ベンチャー」ということばが輝いて見えます。
  しかし、前回のこのコラムでも書いた通り、すでに世界的には「ベンチャー」などといって、分不相応の多くの借金を抱え、先も見えない「たたかい」を日々戦っている「単なる中小企業」はとても多いのです。
いや、そういう企業のほうが多い、と言ったほうが良いでしょう。

  そういう会社に就職する、ということは、もし、あなたが堅実な人生を歩みたいと思うのであれば、まず控えておいたほうが良いでしょう。もし、あなたに一定以上の専門的能力があり、それを人も認めるくらいであれば、そういう会社と一時期だけお付き合いをして人生勉強をする、という選択肢も、もちろんあって良いと思いますが、通常はあまりお勧めできるものではありません。

  しかしながら、経営者と心中するほどの執着と、自分のやる気、能力などがあれば、そういう企業に自分の一生を捧げる、という人生はもちろん悪くありませんが。

●なにをやりたいのか?

  人生にはいろいろな「転機」というのがありますし、また人間は歳をとっていくものです。大学などを出たての若い人間には、やはり仕事のこと、社会のことなど、わかっていなくて当然ですし、「自分がなにをやりたいのか?」ということも、ほとんどの人がわかっていないことでしょう。その時点では、そういうことに悩む必要はあまりないでしょう。

●ライフサイクルを考える

  しかし、30代の半ばを越えたら、やはり自分がなにをしたいか?自分はなにができるのか?ということについて、やはりちゃんとした見識を持って当然の年齢になります。また、40歳代を越えると、世間の自分への評判がほぼ定まってきますから、40歳代後半には、いよいよ自分の人生の終末に向けての早めの準備をすることになります。

  こういう「ライフサイクル」をしっかりと考え、今日を生きることが、就職をするときの大切な心構えになります。

  「ベンチャーはなんだかカッコよさそうだ」というだけで、就職を決めることはやはり辞めておいたほうがいいでしょう。

  特にIT系ではこの種の企業が多いので、気をつけておくべきと思います。

 

 
     
   
  ※ここでは、このコラムの著者三田典玄氏が撮影された写真の中から、著者選りすぐりの作品を毎回数点ずつ掲載しています。  
 

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