インターネット実務検定協会 インターネット実務検定協会ロゴ
ホームに戻る 協会の概要 Q&A コラム リンク お問い合わせ サイトマップ 資料請求
 
   
  パソネタ3分クッキング  
   
     
 
第25回 企業における情報モラル
 

 

〜倫理は作れ、リテラシーは奪え〜

●モラルの低下が情報流出を招く

  最近、Yahoo!BB、ジャパねっとたかたなどをはじめ、多くの企業で大量の顧客情報の流出が相次いでいます。また、流出した顧客情報を基にした、広告メールなども相次いでおり、特に顧客が直接一般消費者である企業にあっては、これらの情報の流出は大きな問題になっています。

  これらの情報流出事件で発表された経過を見てみますと、その多くが、その企業内からの人為的な流出であることがわかります。つまり、簡単に言えば「社員のモラルの問題」ということです。

●情報産業だけではない「技術流出」

  さらに、製造業においても犯罪とまでは行かなくても、この傾向は顕著です。特に半導体産業では、企業機密を持った技術者が週末を利用して中国の企業のアルバイトをして、そこで、日本の会社で取った特許の回避の方法まで教えて、副収入を得ている、ということはもはや常識となっています。
  社内ではリストラにおびえつつ仕事をしていかなければならない技術職にとって、本業と同じくらいの副収入の得られる副業は、もちろん魅力的です。彼らを「国賊」と呼ぶことも、もはやできません。そうしなければ食っていけない、という現実もあるからです。
  すでに、巨額訴訟などで有名になった青色LEDの「日亜化学工業」の青色LEDは秋葉原で見ることはあまりありません。安価で性能の良い中国や台湾の企業の製品のほうが、より安く、数多く売られています。

●以前にもあった問題

  今から10年以上も前から、米国、日本ともに企業内の機密情報の流出は大きな問題でした。また、その原因のほぼ70%が社内のモラルの低下によって起きたもの、という調査結果も、当時からありましたので、これは今始まったことではない、というのが大方の認識です。では、こういった「モラルの崩壊」はなにが原因なのでしょうか?

●企業人のモラルの崩壊はお金の崩壊

  もともと、日本の企業は国家社会の一部として機能してきました。特に日本においては「企業」とは「村」であって、「生活をともにする共同体」でした。ですから、上司が部下と飲み、人間的つながりを深め、組織をより強固なものにしていく、ということが必要でした。さらに、高度成長の過程における日本の企業は、その組織がうまく機能しており、その組織の構成員である社員のモラルも、いちおう一定以上の強さを持っていたといえるでしょう。
  いずれも、この会社で仕事をして定年まで勤め上げれば、あとは死ぬまで家族安泰、というような安心感をベースにしていました。また、企業にもそういう社員のために企業年金などの仕組を安定して運用できる余力がありました。

  しかし、この10年以上続く不況で、今、日本の社会全体に亀裂が走っています。つまり、社員のモラルの崩壊の元凶は結局は日本の社会にお金が不足してきたために起こっていると言えるでしょう。

●金の切れ目が縁の切れ目

  そういう意味で、最近多く報道される「情報流出」は、結局「不況」を元にした現象の1つであると言えます。

  会社から支給される給与が減り、さらに会社そのものの存続の危機は、社員の生活を不安定にします。また、そういう立場の社員の士気を削ぐだけではなく、社員のモラルの低下も招きます。結果として、社会全体に犯罪が増え、社会不安も増大します。ということは「社員のモラルの低下」というのも、現状ではある意味仕方のないこと、とも言えるわけです。

  日本の小売、サービス業の人口は、6000万人の就業人口のうち、約900万人ほどです。その3割がパート、アルバイトであり、これは日本の全就業人口の5%にあたります。この人たちの給与は通常の会社員の給与のほぼ半分となっています。そして、この「パート・アルバイト」の比率は今後もどんどん増えていくことでしょう。
  また、製造業でもパートやアルバイトの利用が盛んになりつつあります。つまり、今後の日本は、社員としての安定が得られないばかりではなく、お金を稼げない、という人たちの比率がどんどん増えていくことになります。

  当然のことですが、経営者から見れば、彼らに正社員並みのモラルは期待できません。実際、Yahoo!BBの470万人分の個人情報流出は、正社員ではなく、契約社員の犯行であることがわかっています。今後も、このような事件は大幅に増えていくでしょう。まさに、企業と個人にあっては、金の切れ目が縁の切れ目、ということであったわけです。

●村でなくなった企業で働く

  結局、社員やアルバイト、契約社員として企業で働く私たちは、こういう世の中で自分たちは働かなければならないのだ、ということを自覚したうえ、会社の発展よりは自分がこの世の中でどう生きていくか、ということを中心に毎日を暮らすことになります。
  個人として、その目的の達成のためには、やはり個人個人の情報リテラシーを底上げしておき、会社にとって必要な能力やモラルを身に着けておくことがなによりも必要になります。経営者の目を持ち、その目で自分を見ることができるかどうか、ということが非常に大切なことになってくるのではないでしょうか?
  会社はすでに村ではなく、頼れるところでもない以上、会社に使っていただいている、という意識ではなく、「私の能力を使わない会社は、大きな損失をこうむる」ということが言えるくらい、仕事やモラルについて自信をつける必要があります。

  かつての日本の企業では半ば当たり前のように言われ、身に着けていない人間は人間ではない、とまで言われた「情報リテラシー」や「情報倫理」は、今では、実はあなたが会社にアピールできる能力の1つとして、非常に強力なものとして存在する社会になりました。これから社会でより良い地位を得ようとすれば、もちろんこれらの「能力」は必須です。

  いまや、情報倫理、情報リテラシーはより積極的な意味を持つ「生きていくための道具」という認識が必要なのです。

 

 

 

 
     
   
  ※ここでは、このコラムの著者三田典玄氏が撮影された写真の中から、著者選りすぐりの作品を毎回数点ずつ掲載しています。  
 


セルリアンタワーと飛行機雲


渋谷警察署に映える空

渋谷の裏通りの空