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第22回 最近の著作権をめぐる動き
 

 

このところ、立て続けに著作権をめぐる動きがあったので、まずはそれをながめてみましょう。

●日本発P2Pソフト「Winny」の利用者の逮捕以後

  昨年11月27日、群馬県高崎市の男性(41歳)が、P2PソフトウエアWinnyを使って、ゲームボーイアドバンスのゲームソフトを「共有」したとして、京都府警に逮捕されました。
  この逮捕が、著作権をめぐる具体的な論議を呼ぶ社会の動きの最初のものとなりました。これは明らかな著作権侵害事件となるだろうとだれもが予想しました。

●Winnyの開発者逮捕される

  2004年5月10日の午前、今度はWinnyの開発者である、通称「47氏」が京都府警に逮捕されました。容疑は「著作権侵害の幇助」でした。この逮捕は「著作権侵害そのものではなくその「幇助」という名目であるところに多少の無理があり、「人殺しに銃が使われたからといって、銃を作る業者を摘発する」ような行為ではないか、とのコメントもネット上のあちこちで見られることになった。
  もちろん、幇助というからには「正犯」がいる、ということになりますが、これが前記の記事の逮捕者であることは言うまでもありません。

●Winnyの解説者家宅捜索される

  さらにWinnyの使い方を解説していたサイトであるWinny Tips」の サイト運営者は、京都府警に著作権侵害幇助」の容疑で家宅捜索 されました。
  なお、Winnyの利用法解説は、ソフトバンク刊「ネットランナー」などの活字媒体でも頻繁に(かつ大々的に)記事で紹介されています。こちらは現在までのところとくにおとがめはない、というのも奇妙な話です。

●京都府警で警察情報が漏洩

  また、3月28日には、今回の逮捕を行った京都府警からの発表で、同府警の捜査情報が2年以上前からWinnyのネットワークに漏洩していた、という事実が明らかになりました。府警の人間が個人で持っているPCを警察内のネットワークに接続し、そこで取得したデータを、自宅でWinnyを使って漏洩させた、ということでした。

  もちろん、WinnyはそのPCの操作をする人間が積極的にうごかさなければ、動作しません。つまり、その府警の人間は「積極的に」Winnyを導入して、使っていた、というわけです。

  この件があるため、上記の逮捕劇は京都府警の怒りがあって行われた、という噂も広まりました。 さて、Winnyだけではなく、ここしばらく、ネットやITをめぐる著作権関係のニュースが非常に多くなっています。そしてそれのどれもが非常に重要なもののように思えます。

●経済産業省が「情報窃盗罪」の新設を要求

  5月11日、経済産業省は法務省に対し、企業が持つ顧客データなどの許可のない漏洩を「情報の窃盗」として、立法することを示唆しました。かつて電気が普及をはじめたとき、「電気の窃盗」について法律ができたのに似ていますね。

●改正著作権法で「CDの並行輸入禁止」

  また、これはミュージシャンやプロデューサーの団体から大変な反対にあっているのですが、現在改正がもくろまれている著作権法には、「CDなどの並行輸入」まで禁止するような条項が、誰知るともなく、米国のRIAAなどの団体による要請によって、おりこまれた、ということです。現在ネットのみならず、あちこちで反対運動が沸き起こっています。

●改正電波法では暗号通信の傍受を禁止

  5月12日に提出された改正電波法案では、暗号化された通信の傍受そのものを禁止し、その侵犯には罰則を規定する、という条項が盛り込まれている、とのことです。

●いま、何が起きているのか?

  日本という国は簡単にいえば製造業で成り立ってきた国です。さしたる天然資源も持たない国として、それはまっとうな選択であったと言えるでしょう。
  しかし、その製造業による立国はとてもうまくいきました。うまくいったために、行き詰まってしまったのです。1990年のバブル崩壊以来、景気は立ち上がっていません。考えてみればあたりまえのことなのですが、そういっているうちに、「日本の次の世代の製造業の雄」である「中国」が大きくなってきました

  かつての日本のように、低い人件費、安い土地を背景にして、中国の製造業はいま隆盛を誇っています。では、次の世代の日本はどのように生きていったら良いか?と考えたとき、同じ製造業をできるはずもなく、製造業のマネジメント産業としての、高付加価値「知的所有権」を売買するような産業か、あるいは金融などのお金を直に扱い、投資をしていくか、どちらかしかありません。
  これが「次世代の日本」の行く先であって、これ以外は低成長どころか、マイナス成長を容認するほかありません。知的所有権をやりとりする「(製造業から見れば)虚業」は、やはり目に見えない「法」が大きな役割を持ちます。法はまた、きちんとその権力によって執行が保障されなければ、誰も見向きもしなくなります。

  ここに、旧世代の音楽産業などの思惑も重なり、こういったことが行われるようになったのだと考えられます。

●時代に逆行する?

  しかしながら、「CDの並行輸入禁止」などは、明らかに時代に逆行した「鎖国」でしかない、というのは、多くの識者が指摘しているところです。
  著作権の保護を訴えるあまり、Webページに写った家族写真の子供が着ているTシャツの「ドラえもん」までが著作権侵害行為とみなされるようでは、神経過敏と言われても仕方ないでしょう。

●Winny開発者の問題

  また一方では、Winny開発者のように「革命家気取り」での「ツッパリ」的発言が多かった場合は、国家はそれを国家転覆の罪に近いものとして、別件逮捕した感じがあります。もっとも、逮捕は「幇助」であり、正犯ではなく、補助的な役割をした、というものの、やはり法解釈上、かなり無理があると言わざるを得ません。幇助というのであれば、Winnyの大々的に紹介した数十万部を売る活字媒体はじめ、さらに多くの逮捕者を覚悟しなければなりません。

  いずれにしても、これらの著作権をめぐる一連の動き(実はまだまだあります。上記は目立ったものだけです)は、一般消費者の目を著作権というものに向ける、良いきっかけとなったことは確かなことでしょう。