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第68回 プロバイダの「データ転送量規制」
 

 

●インターネットが遅くなった?

 最近、「インターネットが遅くなったな?」と感じたことはないでしょうか?あるいは「ある時間になるとブラウザの表示が遅くなる」ということはないでしょうか?

 実は、最近各プロバイダ(ISP)やインターネットデータセンター(IDC)の業者が、さまざまな方法で「データ総量規制」を行っています。そのため、特にデータの量が増える時間帯になると、データ転送が遅くなる、という現象が現れ始めているのではないか?ということがささやかれ始めています。

 先日はhi-hoなどの大手ISPでは規則改正を行い「1日あたりのデータ転送量が15GB以上であれば、アカウントを停止する」ということまで始めています。また、実際に流れるデータパケットの量そのものを普段から蛇口の水を細めるように、規制しているところもあります。

●転送量規制の原因

 これらの規制は、最近のインターネットを流れるデータパケットの極端な増大に対処したものです。そして、この増大は、かのP2Pソフトウエア「Winny」の爆発的普及と、動画配信の普及によって引き起こされている、と言われています。

 外に出てはいけないデータの大量流出の道具の1つとして、マスコミなどでも多く報道されるようになったWinnyですが、この報道により、Winnyをやめる人もいたのですが、反対に「面白そうだから使ってみよう」という人も増えた、というのが現実ではないでしょうか。ですから、Winny利用者数は変わらない、という報道もありました。ということは、このデータの増大の「犯人」は、やはりWinnyというよりも動画配信の普及が大きな原因と言えるのではないでしょうか?

●ブロードバンド化によるコンテンツの変化

 最近は、この転送量規制の問題について、米国のGoogle社が「規制をするのは良いことではない」という意見書を総務省に提出している、というくらい、ネットの業界ではメジャーな問題となっています。

 特に、Google社は自社でビデオ画像の登録と閲覧が行える Google Video なども抱えているため、大きな問題と考えているのでしょう。また、同様なビデオサービスとして最近注目されているのが You Tubeというサービスです。いずれも、ユーザが自分でみんなに公開したい、と思ったビデオ映像をアップロードすると、サーバ側でflashのムービーに変換して、それを公開してくれる、というサービスです。

 これらのサービスは、最近のキーワードになりつつあるポッドキャスティングにも対応しており、たとえば、blogなどに、これらの動画を、静止画のように簡単に「貼り付ける」ことができます。つまり、自分で手軽に動画が見られるページを作ることができるわけです。

 当然のことながら、テレビなどをキャプチャした画面も多くUploadされていて、著作権の問題が多々起こりそうなものがとても多いのですが、Google Videoの場合は、画像のUploadをしてから、審査が必ずあり、問題の多い画像は登録できない、という仕組みになっています。また、You Tubeの場合はこの規制がゆるく、かなり問題のある画像もUploadされているようです。そのため、You Tubeのほうが、非常に多くの「著作権に問題のある画像」が存在する、と言われています。

●ブロードバンド人口の増加

 いずれにしても、これらの動画サービスの普及は、回線がブロードバンド化したために成立したサービスでもあります。逆に言えばブロードバンドの本領発揮、ということなのですが、いままではその本領を発揮するようなサービスがなかったのに、やっとそういうサービスが出てきた、とも言えるわけです。Googleの意見は、まさにその「正論」を突いています。

「高速道路を作ったのに、そこを高速で走る人が多くなってきたら、速度規制する」

ということなのですね。

インターネットの場合、この問題はこれからしばらく尾を引きそうです。

 

 
     
   
  ※ここでは、このコラムの著者三田典玄氏が撮影された写真の中から、著者選りすぐりの作品を毎回数点ずつ掲載しています。  
 

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