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第65回 Winny騒ぎのやぶにらみ
 

 

●情報流出

  最近はどこに行っても「Winny」という単語が聞かれます。テレビのニュースでは、「Winnyで情報流出」ということばが一人歩きしている感じさえします。そして、「情報流出の原因は、インターネットに接続されたパソコンにインストールされたWinnyというソフトウエアである」という言説が定着してきました。

  この報道をちらっと見る限りでは「あ、Winnyが悪いんだ」と、思ってしまった方はかなり多いことと思います。しかし、現実は違うのです。

  Winnyの登場と普及は、既に2002年にまでさかのぼります。また、ネットへの一般的な普及はその翌年、2003年に「Winny2」が登場してからになります。それにしても、2003年から既に3年たっているこの時点で、なぜ、今頃になって「情報流出」が問題になったのでしょうか?。

●Winnyとウイルス

  それは2005年に登場した、通称「キンタマウィルス」(WORM_ANTINNY)という、Winnyを使って動くウィルス・ソフトウエアが原因です。このウィルスは、さまざまなかたちでばら撒かれ、間違えてそのファイルを解凍することによって感染します。感染すると、Winnyを経由して、既に共有を許可されたファイルやフォルダ以外にも勝手に手を出し、そのファイルをZIPファイルに勝手にまとめ、ネットワーク上に「流出」させます。

  じつは、情報流出の原因はWinnyではなく、Winnyに感染するウィルスなのです。

  ということは、常に、ウイルスの感染に気をつけていれば、Winnyを使っていても、情報流出については安全である、ということになります。また、Winnyを使っていなければ、もちろん、もっと安全になることは言うまでもありませんが、Winnyの存在そのものが主原因ではありません。

  つまり、マスコミの報道は正確さを欠いた「やぶにらみ」ということになります。

●著作権と問題のすりかえ

  しかしながら、もともと、Winny上で交換されるファイルの多くは、音楽、映画などであり、いずれも著作権法を無視した「勝手にコピーしたファイル」がほとんど、という現実がありました。ですから、この騒ぎをきっかけに、問題をすりかえて、真の下手人である「ウィルス」の話を表に出さず、「Winny」のほうを表に出して、Winnyそのものを葬ろう、という考えが、マスコミなどの報道の裏に無いとは言えない、そんな陰謀は当然しているだろう、ということを言う人もいます。

  長くインターネットの世界を見ている私からすれば、Winnyそのものの技術と、P2Pという発想は、もともとインターネットが目指していた「ネットワーク内を平等につなげる」という「理想」の現実化であり、インターネットの思想を忠実に発展させた大変に優れたアイデアです。

  また、Winnyの実現のための技術も発展が長らく停滞しているインターネットの技術分野において、非常にエポックメイキングなものです。それそのものを非難するのは当たらないし、それはインターネットの世界の技術の発展を阻害することになりかねない、という認識が、私にはあります。

  実際、Winnyそのものを違法な行為に使う人がいたとしても、Winnyが責められるべき対象になる、ということは不当なことです。ましてや、今回の情報流出騒ぎの多発の原因は、Winnyではなく、Winnyを乗っ取って動くウィルスにあるわけですから、まさに「Winny冤罪」という感じがしています。

  一方、テレビなどのニュースでは、「キーワード」を使い、「誰にでもわかる簡単な説明」がされることが非常に重要だと言われています。しかし、不正確な表現で冤罪を起こしてまで、言い換えれば「ウソになってまで」、簡単にしてしまって「解説」をする必要は、もちろん無い、ということは言うまでもありません。

●利用者のモラル〜ネチケット〜

  私は、今回のWinnyの情報流出騒ぎとその原因として、やはりPCの利用者のモラルや、そのモラルを徹底しきれない環境(会社や役所が仕事に使えるPC環境を十分に用意しないため私物のPCを仕事場に持ち込む、PCのセキュリティに関する教育の不徹底など)があると思います。
  しかし、そういう議論とは別のところで、Winnyというソフトウエアやその作者に対する不穏で不当な動きを、やはり無視するわけにはいかない、と考えています。

  より正確なセキュリティや情報モラルの知識の習得などに、本検定のような試験を利用していただければ、理事としては大変にうれしいことなのですが。

 

 
     
   
  ※ここでは、このコラムの著者三田典玄氏が撮影された写真の中から、著者選りすぐりの作品を毎回数点ずつ掲載しています。  
 

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