昨年、50色のフリースをインターネットで売って話題をさらったユニクロが、本稿執筆時点では店を閉めている。これが非常に興味深い。
ユニクロは一昨年、1900円のフリースジャケットを850万枚売り、昨年は1200万枚の販売目標を立てた。販売対象となるフリース製品には2つの型、5つのサイズがあり、1色当たり10種類の商品ということになる。設定されている基本色は15。これを店頭に置くだけでも150種類を陳列するスペースが要る。
1200万枚を売るにあたって同社が考えたのは、昨年よりも色数をぐんと増やすということだったが、これを店頭で実現するにはさらに何百種類もの商品を陳列しなければならない。店舗スペースに限りがあるなかでは不可能だ。そこでネットを活用した。
テレビで告知CMが流されたこともあって、10月18日の開店直後からwww.uniqlo.comにはアクセスが殺到し、ニールセンが定期的に測定しているユニーク・オーディエンス(重複を省いてカウントした人ベースのアクセス)のランキングでは、ヤフー、楽天に続く三位
となった。これもこれですごいことである。
一説によると、店舗チャネルを合わせた目標である1200万枚のうち、ネットで売れたのは1割に満たなかったとされるが、仮に5%と見積もっても売上金額は11億4000万円。これは日本のネット販売史上、月間ベースの売上としては間違いなくトップクラスだろう。
そのように効率的に機能しているネット店舗を、同社は一時的に閉鎖した。表向きには春に向けた「改装」のためとされているが、おそらくこの閉店は当初から計画されていたものであろう。
普通、ネットに進出した企業は、試行錯誤を繰り返しながらも「店を閉める」ということをせずに、様々な軌道修正を行っていく。ネット販売には確たるノウハウが存在しないから、この軌道修正はやむをえない。そうであれば、最初から期間限定で店を開け、その後じっくりと分析を加えて、最強の形態を把握してから再開店すればよい。そういう戦略的な閉店であろうと考えられる。
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