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 どういうメディアも普通は"掲載バリュー"のある情報しか載せない。ということはメディアに載らない情報があるということだ。

 本欄ははるか昔に「ECウォッチング」という名前でエレクトロニックコマースの動向をお伝えする欄だった。1995年頃のECはまだ言葉の定義さえあやふやだったが、1998年頃になるとビジネスモデルは百花繚乱。2000年にはそれがピークに達した。

 EC動向に掲載バリューがあったのはそのへんまでだったと記憶している。これはもちろん、ECの実体を成す動きがなくなったなどということではなく、あくまでもメディアの側から見れば、個々の動きをメディア上で扱うための差別化軸が急速に薄れていったというに過ぎない。そのへんメディアは勝手である。自分から見て価値のあるものしか載せない。

 ただそれはメディアを受け取る側の姿勢の反映でもあり、掲載バリューのない情報ばかり載せていれば、いずれは立ち行かなくなる。雑誌で言えば休廃刊。ECの世界でも何件かそれが起こった。そしてどの分野でも似たようなことが必ず起こる。

 非常に興味深いのはその後である。掲載バリューがなくなったように思えた後、実は深く広く実体のある動きが浸透していく。

 例えばアマゾンのレコメンデーション機能(マイページ)は今どき誰もメディアで話題にしないが、日々確実に洗練の度合を上げている。それが繰り出す情報で「これも買いたい」「あれも買いたい」と思わせる"強さ"が上がってきているのだ。リストマニアやベストレビュアーの仕組みもそう。これで売上20%増とまでは行かなくとも、10%ぐらいは稼げているものと思われる。

 このようにメディアが取り上げなくなった後に、深いところで実のある動きが進行するというのは健全なことだと思う。おそらく現在、ネット購入を未経験だった40〜60代ぐらいの人が少しずつ市場に入ってきているはずで、それが厚みを持ってくるとECの世界が様変わりする。売上規模で現在の5倍ぐらいになるのではないか?メディアはそういう実直な動きに対して感度が鈍い。そこで果実を手にするのは常に事業者の側である。