前二回で述べたように、音楽ファンの最終的な支出が今まで通
りCDやDVDに向かうのだとすれば、ブロードバンドの音楽系コンテンツはどう活用したらいいのか?
広義の「ラジオ」でガンガン流すしかない。仮想的にもモデル的にも視聴体験的にも「ラジオ」であるようなサービス。それこそがオンラインコンテンツとパッケージメディア双方が生きる道である。
ポップミュージックは70年代の興隆期以降、無限に細分化されてきた。テクノ1つとっても今では10数ジャンルがある。そうしたサブジャンルの1つが好きになった人なら誰でもわかると思うが、フツーのテレビやFM放送を視聴しているだけでは「情報としての音」が耳に入ってこない。FMは相も変わらずヘビーローテーション曲を流すだけだし、テレビはヒットチャートを細切れで見せるしか能がない。現在勢いのあるジャンルをきちんとカバーしてくれる番組などないのである。
そうしたなかでは、CD1枚買うにも情報収集が大変だし、最終的にCDが購入されれまでにはいくつものステップが要る。ざっと次のようになる。必死こいて情報を集める→ウェブ/人の話/雑誌などで固有名詞が頭にインプットされる→それを頭の中/紙/ファイルなどにメモる→クラブや試聴ができるレコード屋でサウンドを確かめる→いいと思う→購入優先度が高まる→サイフの余裕を確かめたり迷ったりする→実際に買う。
現在のインターネットラジオなら、こうしたステップを1つのインターフェースで提供できる。米国の大手ネットラジオではすでに実現しているが、50〜200ぐらいのサブジャンルごとにステーション(チャンネル)を作り、24時間そのジャンルの音を流しつづけ、並行してアーティスト名・アルバム名・楽曲名を表示させて、さらに仮想CDショップと連動させることにより、上のステップが1つのインターフェースで完結する。
CD購入が発生するためには「まず聴く」、さらに「繰り返して聴く」ことが不可欠だが、これがラジオ式の情報・サウンド配信によってうまいサイクルに帰着するのである。常時接続を想定したコンテンツとしては理想的だ。
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