インターネット上でCDと同等の音質を持った楽曲ファイルを有料で販売する形態、すなわち、オンライン楽曲配信の状況について3年ばかりウォッチし、考えてきたが、現時点における結論は次のようなものだ。
音楽業界にとって非常に意味のある、一生涯にわたって音楽コンテンツを購入し続けるような音楽ファンは、最終的にはCDやDVDのようなパッケージメディアを選択する。たまにネット上で有料コンテンツを買うことはあっても、それは試聴の域を出ることはなく、生涯支出から見れば微々たるものに留まる。
こんなことを書くと、いま現在、有料オンライン配信事業に携わっている方の意気をそぐことになるのかも知れないが、オンライン配信が不要だとか将来がないとか言っているのではなく、あくまでも主たる支出はパッケージの方に向けられるということである。また、ADSL普及の速度が遅い、オンライン配信サイトに収録されている楽曲の絶対数が少ない、DRMやSDMIの枠組みの整備が不十分であるといったもろもろの課題があるわけだが、それらをすべて解決済みと仮定した上での結論である。
なぜか?
ヒトはまだ形のないモノに対する消費で満足感を得られるほどに進化してはいないからである。
ひいきにしているミュージシャンがいるとする。彼の音楽ないし映像系コンテンツを「買いたい」と思う。お金を実際に出して買う。そして揃っていく個人的なアーカイブが、書棚に並べて「常に『ある』」と確認できるものなのか。それとも他の数多くのファイルと同じ形でHD内のフォルダに存在しているだけなのか。両者にはずい分と隔たりがある。たとえ価格がパッケージメディアの半分になったとしても、ファイルを保有していることに伴う満足感はかなりプアである。だとすればどうすればいいのか?
続きは次回で述べたい。
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